coffee∩Cigar
あえて苦い煙を肺に吸い込みたい心情になることが、ある。大学の頃交際していた男に付き合って入った大学の喫煙所で、吸煙器があるとはいえ副流煙と煙草の香りが充満するスペースで。その燃えたタバコの香りを吸い込むことで、ナニかしらの言葉にならない気持ちが飲み込めるような気がしていた。
そんな私が喫煙に手を出すようになるのには時間がかからなかったが、残念ながら体質的にタバコは合わなかったらしい。むせることや苦しいことよりも、鼻水やクシャミが増えて煙をくゆらせる前に鼻水とクシャミでタバコの火が消えてしまうような始末だった。
そんなわけで、今に至るまで喫煙の習慣はない。しかしそれでもなお、ふいに苦い珈琲とともにその煙を吸い込みたい気持ちになることはしょっちゅうだ。
今日は本当にそんな気持ち。
人間の業、というべきものなのか。俯瞰で見るとそれは、メビウスの輪でしかないのだ。渦中の人間に気付きく気があるのか、無いのか。気付いたところでそこから抜け出せるのか。抜け出せないところに、人間への愛おしさを感じる一方で、同時に嫌悪感も抱く。
それは、他人のことだけではなく、自分自身にも。
だから煙たい煙の代わりに深煎りしてまるで炭を飲んでいるかのような珈琲を私は欲する。